本人確認をオンラインで完結するeKYCサービス5選とシーケンス例

概要

決済時の3Dセキュアによる本人確認に加え、アカウント登録時にeKYCによる本人確認を行うことによって、相互補完的にオンライン取引の安全性を向上させるケースが多くなっています。ここでは、オンラインで完結できるeKYCと、それに関わる法令やサービスについて概要を説明します。

目的

本記事の目的は以下の通りです:

  • オンラインで完結する本人確認手法(eKYC)とその周辺知識について、概要を把握できる
  • 5つの主要なeKYCサービスの特長を理解し、自身のニーズに合ったサービスの選定に役立てられる
  • eKYCを導入する際の実装イメージを掴むことができる

対象読者

コンシューマ向けのサービスやシステムの開発に関わるエンジニアで、本人確認の導入が必要になったタイミングの方を対象としています。

本文

eKYCとは?

eKYC(electronic Know Your Customer)は、金融機関や通信事業者が利用者の本人確認を行うための手続きをデジタル化した手法です。不正行為やマネーロンダリング防止のため、本人確認が法律で義務付けられている業種もあります。従来のKYCでは、ユーザーが銀行や金融機関の窓口に足を運んで本人確認書類の提示や確認を直接行ったり、郵送で書類を送ったりする必要がありました。取引や手続きが一時中断されることから、途中で離脱してしまうユーザーが増える原因になっていました。オンラインで本人確認を完了できるeKYCの導入により、本人確認のために中断する時間を短縮できることから、ユーザーの途中離脱数の緩和が期待されます。

eKYCの導入目的

  • 法的義務のある本人確認

    金融機関や携帯電話事業者など規制が厳しい分野では、顧客の本人確認が法的に義務付けられています。以下に、本人確認を必要とする法令の例を挙げます:- 犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法):不正取引やマネーロンダリングを防止するため、取引の際には確実な本人確認が求められます。- 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(携帯電話不正利用防止法): 携帯電話の契約者を適切に特定し、不正利用や犯罪を防ぐ目的で、契約時に本人確認を義務付けています。- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律**(労働者派遣法):**労働者派遣契約の適正化を図るため、派遣先や派遣元が労働者の本人確認を適切に行うことが求められています。

    eKYCは、こうした法令に適合した形で効率的に本人確認を行うための手段として普及しています。また、規制の対象となる企業にとって、eKYCの導入は、法令遵守を効率的かつ確実に実現する方法であり、コンプライアンスリスクを低減する手段としても重要な役割を果たします。

  • その他の目的での本人確認

    法的な義務がない場合でも、企業はさまざまな理由で本人確認を必要とすることがあります。例えば、未成年者のアクセス制限が必要なウェブサービスでは、利用者の年齢を確認することが求められます。また、学生割引の対象となるサービスでは、利用者が本当に学生であるかを証明するために学生証の確認が行われることがあります。こうした非法的義務に基づく本人確認もeKYCを利用して実施することで、ユーザー体験を損なうことなく迅速な確認を行うことが可能です。

eKYCとBPO

eKYCと連携して用いられることが多いBPO(Business Process Outsourcing)は、企業が非コア業務を外部に委託する手法です。企業が非コア業務をBPOプロバイダーに委託することで、運用効率の向上やコスト削減、内部リソースの集中が可能になります。eKYCのようにデータの認証や確認を必要とするサービスにおいても、BPOは重要な役割を果たします。

特にeKYCサービスを活用した本人確認では、ユーザーが入力した情報と提出書類の内容や本人容貌が自動判定で一致しないことがあります。法的義務がある場合などにはこれらの本人情報を目視確認する必要がありますが、目視確認にかかる作業量は膨大になることがあります。多くのeKYCサービスがBPOサービスをオプションとして用意しているため、必要に応じて連携することができます。

マイナンバーカードの公的個人認証

犯収法で規定されている本人確認の方法はいくつかあります(参考:e-Gov 法令検索)が、その中でもマイナンバーカードの公的個人認証による方式が注目されています。

マイナンバーカードの公的個人認証は、非対面での本人確認を効率化し、安全性を向上させるために利用される方式です。特に、携帯電話契約における詐欺対策としても注目されています。この認証は、「電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律」(第17条第1項第6号)に基づき、総務大臣から認定を受けた事業者のみが提供できます。

公的個人認証は、マイナンバーカードのICチップに記録された電子証明書を活用して、オンラインでの本人確認を安全かつ簡便に実現します。近年、非対面の手続きが増える中、この方式は信頼性の高い本人確認手段として広がりつつあります。

この方式を利用する際には、ユーザー側で専用アプリのダウンロードが必要になる場合があります。そのため、eKYCサービスを選定する際には、ユーザーに求められる操作や環境も考慮することが重要です。現在提供されている多くのeKYCサービスは公的個人認証に対応しており、企業が法令遵守を満たしながら迅速な本人確認を実施するための重要な選択肢となっています。

主要なeKYCサービスと特長

eKYC市場には、企業が様々なニーズに合わせて選べる多様なサービスが存在します。それぞれのサービスには異なる技術的な特徴や、業務の要件に応じたメリットがあるため、以下に代表的なサービスを紹介します。

eKYCシーケンスの一例(Webで行うeKYCの場合)

サービスの種類や企業の要件によって異なるものの、一般的には以下のような手順で進行します。

図のソース(Mermaid)
sequenceDiagram
autoNumber
actor ユーザー
participant 自社サービス
participant eKYCサービス
participant BPOサービス

ユーザー ->> 自社サービス: フォームに住所・氏名などを入力
activate 自社サービス
自社サービス ->> eKYCサービス: 入力情報を送信し、eKYCサービスにリダイレクト
deactivate 自社サービス
activate eKYCサービス
eKYCサービス --) ユーザー: 本人確認書類・容貌を撮影するサイトを表示
deactivate eKYCサービス
ユーザー ->> eKYCサービス: 本人確認書類と容貌を撮影
activate eKYCサービス
eKYCサービス ->> eKYCサービス: 本人確認書類と容貌の画像を受け付け
eKYCサービス ->> 自社サービス: 本人確認完了画面にリダイレクト
activate 自社サービス
自社サービス ->> ユーザー: 本人確認完了画面を表示
deactivate 自社サービス
eKYCサービス ->> eKYCサービス: 入力情報と容貌が書類と一致するかを自動照合
alt 自動照合OKの場合
eKYCサービス ->> 自社サービス: 自動照合OK
deactivate eKYCサービス
activate 自社サービス
自社サービス ->> ユーザー: 本人確認OK通知
deactivate 自社サービス
else 自動照合NGの場合
activate eKYCサービス
eKYCサービス ->> BPOサービス: 目視確認依頼
deactivate eKYCサービス
activate BPOサービス
BPOサービス ->> BPOサービス: 目視確認
BPOサービス ->> eKYCサービス: 目視確認結果
deactivate BPOサービス
activate eKYCサービス
eKYCサービス ->> 自社サービス: 目視確認結果
deactivate eKYCサービス
activate 自社サービス
自社サービス ->> ユーザー: 本人確認結果通知
deactivate 自社サービス
end

eKYCの今後の展望と導入可能性

eKYCは、オンラインでの本人確認が広がる中で重要な役割を果たしています。法令遵守の要件が厳しくなる中、効率的かつ安全な本人確認の仕組みが求められており、eKYCの導入は今後も進むと考えられます。特に、マイナンバーによる公的個人認証やAIを活用した新技術の発展により、本人確認をよりスムーズに実現できるようになるでしょう。企業にとっては、セキュリティを確保しながら効率を向上させる手段として、eKYCは今後も有力な選択肢となりそうです。

Q&A

本人認証とeKYCは同じ?

「本人認証」と「eKYC」は関連していますが、厳密には異なる概念です。

  1. 本人認証とは?

    「本人認証」は、サービスを利用しようとしている人が「本人である」ことを確認する手続きを指します。一般的には以下のような方法が使われます:

    • パスワード認証:ユーザー名とパスワードを使う。
    • 二要素認証(2FA):SMSコードや認証アプリを用いた追加確認。
    • バイオメトリクス認証:顔認証、指紋認証など。

    本人認証は主にアクセス制御やセキュリティを目的とし、個人が既存のアカウントやシステムにアクセスする際に用いられます。

  2. eKYCとは?

    「eKYC(electronic Know Your Customer)」は、オンラインで完結する本人確認手続きの一種です。特に、金融機関や法的な本人確認が必要な場面で使われます。「KYC(Know Your Customer)」の電子化版であり、法令遵守やリスク管理のために顧客の身元を確認することを目的としています。

    eKYCでは一般的に以下の手続きが行われます:

    • 身分証明書の提出:パスポートや運転免許証のアップロード。
    • 顔写真や動画の撮影:AIを用いて写真が本人のものであるか確認。
    • 公的データベースとの照合:住所や氏名の検証。
    • マイナンバーカードやICチップ読み取り。

eKYCを完了とみなす基準

法的義務がない場合は本人確認で必要な要件を満たしていれば自社判断で完了とみなすことができますが、法的義務がある場合には注意が必要です。金融庁から発表されているQ&Aによると、目視を必須とはしていないものの、自動判定の精度が十分であることに責任を持つ必要があるようです。

規則第6条第1項第1号ホ、へ及びトについては、本人確認書類が真正なものであることの確認は、目視によるものに限らず、専ら機械(十分な性能を有しているものに限ります。)を利用して行うことも許容されます。
また、当該機械が有すべき性能について、具体的な基準は定めておりませんが、十分な性能を有することについて、特定事業者が責任を持って確認する必要があります。

上記の要件を満たすことができれば、例えば自前でeKYCを実装する場合に、書類の画像をアップロードする機能を実装して全件目視確認する方法でも、eKYCを実現できることになります。

参考リンク

← 記事一覧へ